2016年8月22日月曜日

とろ、トロ、長い瀞


渋滞で車がトロトロ走る。
とろ〜りハチミツ。
仕事がとろいヤツ。
岩畳の長瀞(ながとろ)。

「とろ」という音には「ゆっくり・緩い」といった響きがある。

先日、家族で埼玉の長瀞へ行ってきた。
長瀞が観光地になっている理由は、かき氷だけでなく、その地質学的な名所である、岩畳だ。ライン下りの船にのって、船頭さんにこの岩畳の話を聞いた。

この岩畳は、通常なら地下のずっと深いところにある岩盤が広く隆起したものであるとのこと。したがって深く掘らなくても深い岩盤の研究が出来るので、地質学的に希少な場所とのことだ。横に広く平らな岩盤が隆起したのだから、その地表は平らになる。その平らなところに川(荒川)が流れているから、その川の流れは緩やかになる。川が緩やかな流れのところを「瀞」と言うらしい。そして、ここは、この「瀞」が長く続く場所なので「長瀞」という地名になったとのお話だ。へぇ〜。

「瀞」の文字をよく見ると、「三水(さんずい)」に「静」みたいな字。水が静かに流れるとも読める。

数十年前、私が今の息子ぐらいの歳の頃、親父に連れられ、長瀞へ行ってライン下りをしたことがある。そのときは川のしぶきがじゃばじゃば船に入って来てスリル満点だった記憶があるのだが、今回、スリルはほとんどなし。夏場は水量が少ないのが理由らしい。子供の頃行ったのは雪解け水が流れていた春だったか。

ただ考えてみると、長い瀞でライン下りとは、トロトロのはず。乗った船のコースでは、長い瀞の少し上流からスタートし、少しのじゃばじゃばの後、あるときを境に一粒の水しぶきもない穏やーかな長い瀞になって船はゆっくり進んだ。そのメリハリがいい。瀞がよりとろく感じた。所要15分〜20分。猛暑の中、瀞の穏やかさと木々に囲まれた静けさ中の渓流の涼しさは爽快であった。もう少しその静けさの中にいたかった。一緒に行ったうちの子供たちにとって、長瀞のライン下りは、私と違って、動的スリルよりは静的涼しさの印象が残ったような気がする。

ライン下りの後は、流しそうめん。こちらの流れは本当に急で早かった。


流しそうめんの順番待ちの間、岩畳近くの河原に座って子供たちと石拾い。私は畳のような岩のかけらを見つけたので、記念撮影。

2016年8月19日金曜日

骨付きもも肉の照り焼きと舌ビラメのムニエル

先日、小学3年生の息子の誕生日にあたって、子供たちはカミさんから「何が食べたい?」ときかれ、「鶏の骨付きもも肉の照り焼き」との答えだった。傍らでそれを聞いていた私はちょっと意外だった。

なぜかというと、40〜50年前にもなる私の子供の頃も「鶏の骨付きもも肉の照り焼き」に憧れがあったからだ。「こんな何十年経っても同じようなのが食べたいだなんて」とちょっと意外だったわけだ。

私の子供の頃、近所の鶏肉屋さんや焼き鳥屋さんの店先で、鶏の骨付きもも肉や鶏の丸焼きがグリルされながらゆっくりとグルグル回っていた。照り焼きだったから、照明に照らされたその表面はテカテカと赤黒く光っていた。香ばしい香りをかぎつつ、グルグル回っているその様をを眺めて、「あー、いつかこれ食べてみたいなー」という憧れの食べ物だった。また、焼き終わって並べられていたもも肉の突き出た骨の部分にはアルミホイルが巻かれていた。その鶏皮の赤黒いツヤとアルミホイルのキラキラのコントラストがたまらなかった。ただし、憧れだったので、実際のところ、子供の頃、それを食べた記憶はない。うちの子供たちにとっては、手が届くものなのだから、その点は異なるな。

また、トムとジェリーなどアメリカのアニメだったと思うが、ご馳走というと、骨付き肉。そして、手で持つところの突き出た骨の根元には赤いリボンが巻かれているイメージだ。当時の私にとって、このテレビの虚構の世界が、近所の鶏肉屋さんでグルグル回っている現実の世界に繋がっていて、単なる憧れ以上のものがあったと思う。

今の子供たちは、私のような経験はないだろうし、どうして「鶏の骨付きもも肉の照り焼き」に辿り着いたのだろうか。例えば、ワンピースのルフィーが、骨付き肉をかじって「この肉、うっめー」というシーンがしばしばあるが、そのへんか。今度、子供たちにきいてみよう。

ところで、私の子供の頃の話しは、東京の下町でのことだ。鳥取の田舎で幼少の頃を過ごしたうちのカミさんは、また違う。彼女は、近所に住む祖母の家にたまに招かれ、ご馳走になった「舌平目のムニエル」が忘れられないと言うのだ。いろいろ聞いてみると、どうもそれが私の「鶏の骨付きもも肉の照り焼き」に近いようだった。私のように手が届かなかったわけではなく、実際に食べた体験としての思い出としてだけど。数十年も前の田舎で、「舌平目のムニエル」とは何ともハイカラだ。それもバターをたっぷり使ってムニエルにし、仕上げに青じその千切りを散らすというのが、その祖母がお気に入りのスタイルだったらしい。青じそもハイカラぁ〜。田舎といっても海に近いので、舌平目もときどき手に入っただろう状況を付記しておく。

さて、私が初めてこの古典的な「舌平目のムニエル」を食べたのはいつの頃か。私の両親では考えつかなかっただろうから、たぶん子供の頃ではない。二十歳頃、ウェイターとしてアルバイトしていた渋谷のレストランのメニューに「舌平目のムニエル」があった。「おめぇら、知らねぇだろうが、フランス料理といやぁ、この舌平目のムニエルだぁ。ソール・ムニエルってんだー、覚えてとけ」と、私と同じ東京の下町出身のシェフの下町訛りの口癖だった。私はお客さんにいつもサーブしていたものの、そこでは一度も食べたことがなかった。しかし同じ頃、表参道の交差点際にあった「Fish Market」というレストランに入ったとき、メニューに「舌平目のムニエル」があり、ここぞとばかりに思わず注文した記憶がある。味は覚えていないものの、レストランの名前・場所を覚えているのが不思議だが、だぶんそれだけ特別なものだったのだろう。最近は意識したことはないが、今どきのフランス料理のレストランではもうメニューにないのではなかろうか。

さてさて、息子の誕生日に話しを戻す。

子供たちには「鶏の骨付きもも肉の照り焼き」、自分と私には、青じそを散らした「舌平目のムニエル」を、カミさんは料理してくれた。冒頭の写真は、私の皿の「舌平目のムニエル」がそろそろ食べ終わるところ。縁側は小骨が多くて食べにくく思っていて、最後に片側だけ残ってしまった。それを見たカミさんは「この縁側がパリパリしてうまいのよー」との年季の入ったアドバイス。言われるままに、残った縁側を食べると、魔法がかかったように、小骨も気にならず、うまかった。この「舌平目のムニエル」はバターたっぷりで、縁側の小骨もパリパリなのだ。

そんなわけで、子供たちの「鶏の骨付きもも肉の照り焼き」の骨には、私はアルミホイルを巻き、その上に去年のクリスマスで余った赤いリボンを結んでみた。

2016年8月12日金曜日

「日光天然かき氷」の穴場

猛暑が続く。
こんなときは、プール、冷やし中華、かき氷。

ということで最近は、ふわっとした口溶けの「日光天然かき氷」なんてのが流行っている。練乳やシロップ類も自家製の有名店も数あれど、この猛暑の中、とても一時間もの行列なんか並んでられない。でも、天然氷のかき氷、一度は食してみたいなーなんて思ってはいた。

で、先日、うちの子供たちの「夏休み、どっか連れてってー」に応えて、東京スカイツリーに行ったときのこと。展望台の後、プラネタリウム、水族館とまわって、涼しくなった後、隣接のソラマチをぶらぶらしていると、「日光天然かき氷」(750円)のポスターが目に入った。カウンター越しにお姉さんが二人、客待ちをしているほどで、行列はなく、一人も待っていない。

この「日光天然かき氷」のシロップは、とちおとめ製の、いわゆるプレザーブタイプ(イチゴが大粒で残っている)のイチゴジャムソースのみ。ということで、上から下まですっかり栃木県。ここは、栃木県のアンテナショップだった。このお店の前がちょうどベンチが数個あるちょっとした休憩場所になっていて、そこに座って、家族四人で頂いた。

初めて食べた「日光天然かき氷」。冒頭の写真のように、粗めに削られたように見える氷は、口の中でフワッと溶けた。なるほど、この感じ、とてもいい。四人で食べたせいもあろうが、あっという間に食べ終えた。流行る理由が分かる気がした。

ところで、以前、鵠沼にある、とある有名天然かき氷店の店主がラジオに出演していて話してたことを思い出した。氷の温度がポイントらしい。通常の冷凍庫の温度は、マイナス17℃だか18℃。したがって、氷もその温度。しかし、天然氷のかき氷は、マイナス3〜4℃ぐらいと言っていたような記憶がある。かき氷にする前に、マイナス3〜4℃になるまで氷を外に置いて、適温の氷をかき氷にするらしい。夏場の行列についてその店主、「夏場以外なら、並ばなくて済みますよ」。それを聞いて「夏場以外にかき氷なんて」と思ったが、時季に合わせて、氷の温度を変えているということだから、そんな単純な話しではない。

さてさて、マイナス3〜4℃の氷だと、口の中ですぐ溶ける。これがフワッとした口溶けだ。頭が痛くならないのも、あんまり冷たくないからだろう。きっと、マイナス17℃なんていう冷たさは、そもそも人間にとって生理的に冷めた過ぎるのだ。だから頭が痛くなる。実際に食べてて、この3〜4℃の温度が心地よい。心地よく受け入れているから、身体は警戒することがない。そして心地よく受け入れられた「冷たさ」は、冷凍庫製の氷より「冷たく」感じてしまうところが妙なるところだ。

「日光天然かき氷」、一度は食べてみたいけど、有名店で並ぶ程ではなく、一度ぐらい東京スカイツリーに行ってもみてもいいかなと思う人にとっては、このアンテナショップの「日光天然かき氷」は、穴場かも。まだまだ暑そうだしね。