2015年6月22日月曜日

醤油小屋

 3月17日のエントリで、搾り師の醤油搾りというのがあった。そのときは、文字通り、醤油を搾った際のもの。で、搾り終わって、一升瓶に詰めると、樽が空く。そして、4月、次の、つまり今年の仕込みが終わった。

で、3月の搾りの際、搾り師の天野次郎さんは、搾る前のモロミを味見した後、アドバイスしてくれたことがあった。

「夏場の温度が少し足りなかったかも知れないですね」

2014年4月25日のエントリ、手造り醤油でも触れたが、この萩原忠重さんが考案した醤油仕込み方法の最大の特徴はここにある。通常の醤油仕込みは、夏場の温度上昇を抑えるため、冷暗所で行われるが、私たちが行っている製法では、夏場は、直射日光に当てる。いや、直射日光に当てるだけでなく、温室内などに置いて、さらに温度を上げるのだ。

またもう一点。搾り師の方々は、冬場、軽トラに搾り器を積んで、いろんなところへ搾りに行く。だから、それらいろんな状況で仕込まれたいろんなモロミを見てきている経験が蓄積されている。だからこそ、こうしてアドバイスしてもらえるのだ。今年の搾り後、私は天野さんに「いろんなモロミを見ると勉強になりますよ」誘われて、他のモロミの搾りを見学に行ったことがある。夏場は陽に当てるなど、製法の概要は共通だが、あまりにも違うモロミで驚いた。つまり、搾り師は、搾るだけでなく、仕込みのアドバイザーでもあるのだ。

去年まで、私たちは、南向きの軒下に仕込み樽を置いた。雨もよけなければならないので、軒下だった訳だが、一番陽が高い頃だと(つまりちょうど今頃から)、しばらくの間その軒下は軒の影になってしまっていた。その軒下を貸してくれている友人もそれに気がついていた。さらに、閉じた空間ではなかったので、天野さんの「温度が少し足りないのでは?」にはとても説得力があった。そして、その言葉が耳にこびりついた。でまぁ、梅雨前でかつ「これから暑くなるぞー」という5月末についに冒頭の写真の醤油小屋を作る運びとなった。

こうして、偉そうに私は「醤油小屋」だの「夏場の温度」だのと書いてるが、場所は、その友人宅だし、原材料の手配や仕込みの段取り、普段の攪拌もほとんどはその友人にお願いしている。なので、「こんなときぐらいは‥‥」ということで、5月末に私も参加して、その小屋(温室)作りに携わることになった。幸い、その友人は非常に器用な人で、役目を終えた古い枕木を主材料にして、でっかい自分の家までも作っちゃった人。この醤油小屋も私の猫のような手が加わっただけで、すんなりと出来上がったのだった。

冒頭の写真は、私がその友人宅を後にした際のもの。あとは横壁のビニールシートを貼って完成というところまでこぎ着けた。そして、下の写真が、後日の完成後。中に、モロミの樽が鎮座されてる。
私はベトナムで「カンホアの塩」という塩を作っているが、それにも少し似ているところは、自分が望むものを作るためには、それを作る設備を作らねばならないこと。私の場合は、「カンホアの塩」を作るための塩田などある訳だが、それを作っていると、塩を作っているんだが、塩田を作っているんだか分からなくなるときがある。この醤油もそれに似て、醤油を作っているのだが、せっせと小屋を作らなければならない。

余談だが、「カンホアの塩」に【石窯 焼き塩】といういわゆる焼き塩があるが、その石窯は、この醤油を仕込んでいる「友人宅」のその友人本人に、設計から施工、そして焚き方指導までお願いしているのだった。彼の名は、黒澤有一。陶芸家でもある。上の写真の醤油小屋の裏手には、彼自作の登り窯がある。(クイズ:チラッと煙突が見えているけど、どれかな?)

来年春先の搾りには、出来たら、今年来てくれた搾り師・天野次郎さんにまた来てもらいたいなー。今から、「今年のはどお?」ときいてみるのが楽しみだ。

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