2012年1月30日月曜日

手作り歯磨き粉と私

私は10年ほど前から、歯磨き粉を自分で作っている。振り返ってみると、この歯磨き粉には、私の子供の頃からのさまざまな経験と記憶が凝縮しているように思えた。そして、それを書き出してみたくなった。

私が知る限り、40年ぐらい前までは、「歯磨き粉」というのが日本にあった。俗に言うペースト状の「歯磨き粉」ではなく、本当に「粉」。紛れもなく、パウダー状の歯磨き粉のことだ。紛らわしいので、ここで書く「歯磨き粉」はパウダー状のもの、そしてペースト状のものは「歯磨きペースト」ということにする。

では、記憶が残っている子供の頃から書いてみたい。

●幼少の頃●
○デンターライオン
○田舎の歯磨き粉

私が物心ついた頃、東京の我が家で使っていたのは、金属のチューブに入った歯磨きペースト、デンターライオンだった。昔のチューブは、絵の具のように折れた角っこから中身が漏れてきたりした。そんなのが始まり。で、これは両親の好み。「(甘くなくて)辛口なところがいい」なんて言ってたっけ。でも、長野の山ん中にある父親の田舎(実家)へ遊びに行くと、カネヨのクレンザーよりも一回り小さいサイズの厚紙の箱に入ったパウダー状の歯磨き粉だった。

その紛れもない歯磨き粉の色は、たしか薄っすらとブルーだった。歯ブラシの先をちょっと水に濡らし、それを箱の中に突っ込んで、粉をつける。多くつけすぎると、トントンと箱のフチでたたいて余分な粉を落としたりしてね。少しとは言え、ブラシには水がついてるから、使っているうちに箱の中の粉がダマになり始める。でも、特に気にならなかった。そして、何より、私は子供ながらに、チューブを搾る歯磨きペーストより、粉に歯ブラシを突っ込んでつけた歯磨き粉の方が、スタイルとして格好いいと感じていた。

とは言うものの、ほとんどの時間を過ごした東京の自宅ではいつもデンターライオン。自然とデンターライオンを使い続けた。

●20代の頃●
○シヴァナンダの歯磨き粉
○ニームの木の枝

20代になってもしばらくは、普通の歯磨きペーストを使っていたが、20代半ばにインドを旅行していたとき、アーユルヴェーダ(インドの伝承医学)の歯磨き粉に出会った。それを使い始めてからは、それまで使っていた、一般の歯磨きペーストは、「何だったんだ?」と感じた。一般の歯磨きペーストはミント味が多いが、そのミント味が強すぎる。歯磨きというより、不自然に強烈なミント味・香りの石鹸で口の中を洗っているように感じ始めた。そのアーユルヴェーダの歯磨き粉との出会いを境に、私の歯磨き粉の好みは大きく変化した。

そのアーユルヴェーダの歯磨き粉、石鹸成分はないので全く泡は立たない。味は強めの辛口。唐辛子の辛さではない。刺激的な味だけど、水ですすいだ後は、不思議とその味は残らない。朱色の粉だった。また、ほんのちょっとつければよかったので、高さ7センチほどのプラスチックの容器で2年はもった。スパイシーな味ながら、歯を磨いたあとのナチュラルなさわやか感がとても心地よくクセになった。

ちなみにその歯磨き粉は、インドはリシケシに本部があるシヴァナンダ製。シヴァナンダはヨーガのアシュラムとして名高いが、ヨーガはアーユルヴェーダとも関係が深く、いろんなアーユルヴェーダの品も作っている。

また、お遊び程度だったけど、ニームの木の枝も使った。インドの人たちは、ニームの木の枝を歯磨きに使っている。最初に使うときは、その枝の先を噛んで、繊維をバラバラにしてブラシ状(というか刷毛状)にする。その刷毛で、全部の歯をこするのだ。ニームには抗菌効果のある成分が含まれているので、これで虫歯予防になる。使い続けるうち、枝は徐々に短くなって、使えなくなったらおしまい、という楽しい歯ブラシ兼歯磨き粉だ。ちょっと辛めだけど、味もナチュラルそのもの。もうこの頃には、一般の歯磨きペーストで歯磨きした後の後味は受け付けられなくなってしまった。

●30代の頃●
○ナス黒の歯磨き粉
○ねんどのハミガキ

長くもつシヴァナンダの歯磨き粉がなくなると、日本の自然食品店によくあった「ナス黒」を使い始めた。茄子のヘタを黒焼きにしてパウダー状にしたものに塩をあわせたもの。塩には歯茎の収れん効果がある。シヴァナンダの歯磨き粉は、数年使ったが、私にはどうも研磨剤がややきつく、ナス黒の方が使い心地がよいように感じ始めていた。ナス黒は、たいがい小さなポリ袋に入って売られていたので、カメラのフィルムのケースに移して使っていた。

この頃、歯医者さんに、「歯磨き粉はつけなくてもよい。大事なのは、歯磨きして、歯に挟まった食べ物などをちゃんと取り除くことです」と言われた。私にとって、この言葉は、石鹸(泡立ち)と強烈なミント味の歯磨きペーストへの疑問の裏付けになった。そして、自分が心地よいと感じる成分・味が一番大事なのではないかと確信めいたものを持った。

その後、知人のすすめで、粘土の歯磨きペーストを使い始め、しばらく使った。

=> ねんどのハミガキ(Body Clay)

これはモンモリロナイトという粘土の粒子が汚れを吸着することで歯磨きする。これは歯磨きペーストではあるけれど、研磨剤ゼロで、味は「ほのかな」ミント味。歯磨きしても、一般のペーストのように泡立つようなことがなく、後味がとてもいい。

●40代以降●
○自分で作る歯磨き粉

しばらく使った「ねんどのハミガキ」だったが、このBody Clayシリーズには、粘土(モンモリロナイト)そのものを化粧品の基剤として売られているものがある。商品名は、「ねんどの粉」。私にはこれがいいと思った。ペースト状というのは、水分が含まれるから、乾燥したパウダー状に比べどうしても腐敗しやすい。そのため、パラベンなど防腐剤が必要になる。この「ねんどの粉」は純粋な乾燥した粘土のパウダーだから、これだけ使う分にはパラベンは要らない。この粉と「カンホアの塩【石臼挽き】」を混ぜて、歯磨き粉として使い始めた。このへんから、歯磨き粉は「自分で作る」習慣になっていった。

30代の後の方から、私は塩を作り始めたが、最初は焼き塩がなかった。焼き塩を作り始めてから、「ねんどの粉」に混ぜた「カンホアの塩」を【石窯 焼き塩】に変えた。焼いてない【石臼挽き】よりも【石窯 焼き塩】の方が湿気にくく混ざりやすい。そして味も少し柔らかくなる。この時点で研磨剤成分はなかったが、コーヒー好きのせいで、歯の色が気になり始めた。そこで少量の天然重曹を混ぜた。重曹は、化学的に作られたものと天然物(採掘されたもの)とでは、全然味が違う。掃除なんかに使うには化学的なものでも十分だが、歯磨き粉には断然天然モノだ。

という訳で、私の手作り歯磨き粉レシピは以下のようになった。

ねんどの粉・・・・3
天然重曹・・・・1
カンホアの塩【石窯 焼き塩】・・・・1

上記をただ混ぜる。数字はだいたいの目安です。一番味がするのは塩なので、塩加減で、この歯磨き粉の味の調整になる。歯をよりピカピカにしたければ、重曹を多めに入れればいい。

1回の使用量は、歯ブラシにちょっとつけるだけだから、レシピの数字をコーヒー・スプーンで作ると、一人分として数ヶ月分はある。

また、昔の田舎の歯磨き粉のように、ダマにならないようにするコツは、少量ずつ容器に入れること。つまり湿気らないうちに使い切る量を容器に入れる。数ヶ月分作ったら、小出しに容器に移せばいい。こんなことしながら、このレシピで10年ぐらい使ったと思う。

ところが、つい1年ほど前、知人がニームのパウダーの歯磨き粉を作った。商品名は、「ソラダニーム粉はみがき」(これは、ニームのパウダーが主成分で他のものも入っている)

出ました、ニーム。
20代の頃、インドで歯ブラシに使っていた、あの懐かしのニームだ。

ニーム自体は、一般的には変わった味だとは思うが、親しみもある私には、抵抗がない。でもこの「ソラダニーム粉はみがき」、ニームの粉が主成分でありながら、他のものも含まれているせいだと思うが、これだけでは私にとって「(歯磨き粉としての)いい味」ではない。ただその知人からもらったサンプルを、それまでの私の歯磨き粉レシピに加わえたら、よくなった。つまり上記のレシピに、「ニーム・パウダー・・・・1」が加わった。


【上の写真】 左が(1人で)数ヶ月分の容器(ニームパウダー入り)、真ん中がニームパウダー抜きの子供用、右が数ヶ月分の容器から小出しにしてる小さい容器。3つの容器ともにアクリル製のスクリューキャップ式(無印良品)。


【上の写真】 左が、「ソラダニーム粉はみがき」、真ん中が「ねんどの粉(Body Clay)」、右が「カンホアの塩【石窯 焼き塩】」。

ニームが加わることで、味はややスパイシーになり、ひと味変わった。もちろんニームの抗菌作用も加わった。歯磨き粉は食べ物じゃないから、「おいしい=いい」とはならない。そのへんの表現が難しいが、私としては、「ナチュラルなさっぱりさ」のような味が大事だ。

ただひとつの問題は、この歯磨き粉で歯を磨いた後も、食べ物・飲み物がおいしいので、ときどきつい食べたり飲んだりしてしまうことだ。

幼少の頃のデンターライオン、田舎で使った歯磨き粉、インドで出会ったアーユルヴェーダの歯磨き粉とニームの枝、ナス黒、ねんどのハミガキ、そして「カンホアの塩」。こうしたモノや記憶が、今の歯磨き粉には詰まっている。

2012年1月23日月曜日

鮓とうふ(その2)


去年、「あらいぶきっちん」より、豆腐の熟れ鮓「鮓とうふ」が届いた。もう一度書きますが、豆腐の熟れ鮓です。去年、買い込んで少しずつ食べてるが、最近、そのまま食べるのではなく、ちょっとバリエーションを試してみた。きょうのエントリはその紹介です。

関連サイト:あらいぶきっちん(←このページから左下の「鮓とうふ」をクリック)

関連エントリ:豆腐の熟れ鮓・鮓とうふ(2011年3月3日)

この「鮓とうふ」。鮒の熟れ鮓とまでいかなくても、酸っぱいタクアンやすぐき漬けが好きな人にとっては、そのままで十分おいしい。

ただ、その商品説明書には、下記のような記述があった。

●豆腐を素揚げにしたり・・・・。
●飯(いい)をすりつぶし裏ごししてから豆乳と混ぜて冷蔵庫で発行させればヨーグルト。

ということで、素揚げじゃないが、衣をつけて揚げてみたのが冒頭の写真。一見、高野豆腐かなんかのフライに見えるが、食べると分かるその類い希なる味わい。まずは、かじって衣が割れて立ち上る乳酸な香りがたまらない。そして食感は芋類のようだ。この豆腐は、熟れ鮓になる前にしっかりと水抜きされているから、フライにするとホクホクする感じ。そのホクホクさが芋類を連想させる。しかし、熟れ鮓だから、味は酸っぱい。そう酸っぱいフライなのだ。よくトンカツにレモンを搾るが、これは豆腐そのものが酸っぱい。元々酸っぱい豆腐だが、フライにするとその酸味は柔らかくなり、ホクホクの食感の方が印象が強くなる。そして元々は豆腐だったことを思い出させてくれる、優しい甘さの淡い余韻がある。

私も先月50歳になり、フライものは避けがちだが、こいつは私の乳酸発酵モノ好きとあいまっていくらでも食べれる。そのままの「鮓とうふ」に合わせる酒は、日本酒か軽めのワインだけど、このフライは、ほんのりカラメルの香りを感じるシメイ・ビールがイケた。ほんのりとした酸味に揚げ衣、そしてほんのりとした甘い香りに発砲の舌触り。・・・・口の中に唾液がたまる。


さて、お次はヨーグルト。この「鮓とうふ」の飯(いい)と豆乳だから、植物性のヨーグルトだ。こいつになると、酸味はさらに穏やかになり、さらっと飲む感じ。無論、牛乳のヨーグルトとは似て非なるモノ。ちょっと豆乳と混ぜてからの熟成が今回は足りなかったかもしれないが、豆乳の飯(いい)シェイクって感じもある。「鮓とうふ」を食べるとついつい酒を飲みたくなるが、このシェイクだとこれだけで身体がフレッシュになる感じがある。

ついこの間、大寒だった。こう寒いとついつい身体が硬くなる。そう感じるときに、私の身体は、この乳酸の酸味で活性化されるように感じる。私は酸味好きだが、同じ酸味でも、暑い時期は柑橘系のさわやかさ。そして、この寒い時期の酸味は、乳酸系の身体フレッシュ系。考えてみると、季節によって違う気がする。

来週は、どぶろくの仕込みを始める予定だ。そこでも乳酸菌が活躍してくれる。

2012年1月19日木曜日

東京タワーへ行ってきた


先々週の日曜日、家族で東京タワーへ行ってきた。

何てったって、この春には東京スカイツリーがオープンです。そんな中、「東京タワーさんはどんなかな〜」と私には少々気になり、家族を誘った。リリー・フランキーさんのときのブームももう一昔前のことのように感じる。

7歳と4歳の幼い子供たちが大きくなる頃は、「やっぱ東京スカイツリーでしょ」となってるとも思えたし、東京タワーは何となく昭和の象徴のようにも思えたし・・・・、今のうちに、子供たちを連れて行きたい気持ちもあった。東京タワーを嫌いな人はいないように思える。うまく説明できないが、私の心の底の奥の方にも、特別な「思い」がある。幼少の頃、親に連れて行ってもらった記憶なのか。東京生まれの東京育ちなせいか。大人になってわざわざ上るようなことはなくなっても、いつも近くを通ると必ず探し、見つけると安心した。

さて、冒頭の写真。きれいだと思いませんか? 特にその稜線、四角錐の4本の鉄骨のカーブが何とも美しい。高いけど、形としての安定感がとてもある、「座り」のいい形だ。昔からの朱色と白の塗装も青空に映えている。

ついついスカイツリーと比べちゃうけど、スカイツリーはほぼ円錐形で倍くらいの高さ。現代の建築技術の結晶とでも言うんでしょうか、形としての安定感は東京タワーだけど、きっとスカイツリーの方が丈夫なんでしょう。
それで、「そんな東京タワーさんからスカイツリーさんを見ると、どんな風に見えるかなー」と思い、見てみた。それが上の写真。上の小さいのと下の大きいのとで2つある東京タワーの展望台。その下の大展望台からの眺めです。(実際は、上の写真よりも大きく見える) ここの高さは、145メートル。押上界隈には高いビルがあまりないので、すぐに発見できた。ビルの陰でなくてよかった。まーこんなです。

ちなみにスカイツリーを、近くで見るとこんな感じ。左の写真は100〜200メートルぐらいまで近づいたとき、車の中から携帯で撮ったスカイツリー。2ヶ月ほど前の写真だ。何しろでかい。ハンパなくでかい。

スカイツリーの下の方の展望台の高さは350メートル。すでに東京タワーのテッペンより高い。でも、東京タワーだって、低い訳じゃ〜ない。ということで、この展望台にあった、「ルックダウンウィンドウ」を覗いてみた。大展望台の床にある窓だ。観光バスが米粒のように見える。






右の写真じゃ分かりにくいが、足がすくむ感じ。私の横で見ていた20代の女性が、「窓が小さすぎて怖くないよねー」と連れのお母さんらしき人に言ってた。「まー、そー言うなよ。この窓がでっかいと怖い人だっているんだから・・・・」と言いたくなった。145メートルだって、十分高いのだよ。でも、これが今の東京タワーの立場なのかも知れない。何故か、オープン直後の霞ヶ関ビル(36階です)に上ったときのことを思い出した。そのとき、「歩いてる人がアリンコみたいだね」と話したことを思い出した。40年以上前だな。


そして、東京タワーは、階段でも上れる。これはスカイツリーにはなさそうな気がするぞー。小学生の頃、一度上った経験がある。ちょっと興味あって、案内してる(仲のいい)男女お二人のスタッフの方にきいてみた。「階段で上ったら、入場料安くなるんですか?」

「いえいえ、同じで〜す」と、満面の笑顔で答えてくれた。ご参考まで。








この後、上の小さなの特別展望台(250メートル)へも上って、地上へ降りた。やや日が傾き、ライトアップが始まっていた。何とも美しい。大展望台に「2012」の白い文字が見えるでしょうか? 「これは何の意味があるのだ?」との疑問もあるが、この際、まー、ヨシとしようではないか。そして、もう少し時間がたって、帰り際。「2012」の文字がハッキリ見える。

東京タワーを訪れて、エレベーターで一緒になった人、たまたますれ違いざまに話し声が聞こえた人、4〜5人の人が、「これって、そろそろ壊されるのかしら?」と同じ会話を耳にした。実は私も同じことを考えていた。いろいろ事情もあろうが、なくなったら寂しい思いをするだろうなー、と思いながら帰路についた。