2010年5月28日金曜日

豆腐の【味噌漬け】と【塩粕漬け】

きょうは何ともマニアックな話題。まぁ、だいたいいつもマニアックか。さて、豆腐の漬物・・・・【味噌漬け】と【塩粕漬け】をよーく比べてみた、そのレポートだ。「おいしさ」という至って主観的なことを、あえて取り上げてみた。

4月16日付けの当ブログで、「塩粕」というタイトルで書いたとき、豆腐の【塩粕漬け】についてこう書いた。
まずは、豆腐の味噌漬け風に、絞った豆腐を「塩粕」に漬けてみる。・・・・正直、やや物足りない。たぶん味噌漬けに慣れてるせいだと思う。豆腐の味噌漬けに使う味噌は、糀が多めの味噌が好き。糀の甘さやうま味がしっかりあるからだ。それに比べ、「塩粕」はその甘さ・うま味が少ない分サッパリしている。

「物足りない」と感想をしている。そしてその理由を、「味噌漬けに慣れているせい」と思った。ただ、その豆腐の【塩粕漬け】は、実際に【味噌漬け】と並べて比較した訳ではなく、あくまで私の中の想像だった。どーも漠然としたひっかかりが心の中に残っていたので、「よーし、この2つを目の前に並べて味を比べてみるぞー」と思い立ち、やってみた。そしたら思った以上におもしろかったので、それを報告してみようと思う。


・・・・ということで、上の写真。左側が【塩粕漬け】、右側が【味噌漬け】。見た目はほとんど同じだが、若干左の【塩粕漬け】の方が茶色が濃い。味噌は麹が6〜7割ほどの甘めの白味噌系。もちろん両者同じ豆腐。水切りしやすく漬かりやすいように、今回は豆腐を平べったく半分に切った。しっかり水切りした豆腐をサラシに包み、その周りに塩粕と味噌をそれぞれ塗りたくった後、ラップに包んで冷蔵庫で1週間。それを開いたのが写真の状態だ。サラシの上にスライスした豆腐を各々のせている。

【味噌漬け】は何度も食べているので、まずはそれを再確認。

ん〜、おいしい〜。舌の上にのせた瞬間、口の中にうま味と麹の柔らかな甘みが広がる。うま味が強いところは2年以上熟成されたチーズのようでもある。酒が欲しくなるが、しっかり酸ののきいた力強い日本酒かワインならタンニンがしっかりした赤もいけそうな感じ。濃厚な味わいなので、キレイな感じの酒では負けてしまうだろう。

次に、【塩粕漬け】。

口に入れた瞬間、【味噌漬け】のように「口の中にうま味が広がる」ということはない。味というより、むしろ酒粕の香りを感じる。それで「あ〜、酒粕だ〜」と思っていると、ジワジワと塩気とうま味を感じ始める。最初から一気に来た【味噌漬け】とは違い、右肩上がりのグラフのように徐々に徐々に味が舌の上に広がっていく。【味噌漬け】を食べた後ということも手伝って、甘みは少なく感じるが、ゆっくりと広がっていくおいしさの変化のような世界がある。「これでどうなるんだろう?」と思いつつ、口の中で豆腐がすべて溶け終わると、ほのかに豆腐の甘さがやってきた。おいしい。味の余韻も【塩粕漬け】の方がスッキリ、酒で言えば、キレがある。

【味噌漬け】は、最初からドーンと来るうま味。濃厚さコクではコッチだ。口に入れたときのインパクトにパンチがある。一方、【塩粕漬け】の最初は、何気な酒粕の香り。そして少しずつ熟成された酒粕の味がやってくる。そしてそして何と言ってもその余韻がいい。味噌に比べ甘さが少ない分、キレがはっきりしていて、「塩粕が去ったかな〜」と感じ始めると同時に、豆腐が持つ大豆の淡い甘みがフィナーレを飾ってくれる。

こうして改めてじっくり食べてみると、以前とは明らかに印象が違ってきた。私が以前、【塩粕漬け】の方を「物足りない」と思ったのは私が安直だっただけかも知れない。例えばその余韻まで感じる余裕が心になかった。と言っても、【味噌漬け】の方だって、これはこれでおいしい。口の中に入れた瞬間に感じさせてくれるおいしさとしては、【味噌漬け】の方が分かりやすい。でも、漬かった豆腐を口の中で溶かしながら、時間の経過とともに感じる味としては、【塩粕漬け】の方が楽しませてくれる。そして余韻の中で、豆腐の味を思い起こさせてくれるところは、【塩粕漬け】の方の特徴のように思う。そう思うと、【味噌漬け】はパンチが強い分、淡い味が隠れがちになるのかも知れない。

「人は見かけによらない」とはよく言うが、ものの味も口に入れた瞬間だけで判断するのは、もったいない。「吟味」とは必ず時間を含むものだ、と改めて心に刻んだ。

それにしても、今回の味見は、仕事場でやった。つまり酒なしだった。自宅でやってると何かとせわしく、子供も黙ってないし、なかなか落ち着かないのだ。子供が元気なのは何よりいいことだが、今夜は子供が寝静まってもちょっと頑張って起きてて、残った2つの漬物をアテに、チビチビやろおっーと。

2010年5月27日木曜日

ミョウガタケ


上の写真中央に、すっとのびた茎が2本あるの、分かりますか? 上部のやや白っぽい部分は新しい葉の裏側です。よく見ると、2枚ぐらい育った葉も生えてるので分かると思いますが、ミョウガの若芽です。

先日、新聞のコラム欄に「ミョウガタケ」という名で紹介されていたので、どれどれとうちの庭のを採って食べてみたが、なんともうまい。その若芽を根元から切り取って、切り口のあたりを1〜2口だけ食べる。夏に出回るいわゆるミョウガはこの花のつぼみにあたる。それは暑い盛りに清涼感をもらえる独特のやや強めの味だ。それに比べ、このミョウガタケは、その強めの味が1〜2割方でほのかに感じる程度。しかしミョウガにはない春の淡い緑色な味もある。谷中生姜にも通ずる感があるが、谷中生姜よりもぐっとジェントルな味わいだ。王道はそれこそ谷中生姜のように味噌をつけて食べるらしいが、何しろとても淡い味なので、ほんの少しの塩だけでそのものの味を感じるのもいい。

こいつは「ちょうどいいの」を選ぶのも肝要だ。太くて大きく育ち過ぎてると、硬くてひと口だけでも筋が口に残り、味も青臭さが強い。かと言って、細過ぎると食べるところがほとんどない。上の写真は、うかつにも食べるのを採った後に撮ったので、ベストなものとは言えない。「細めだけど、まぁイケルかな」ぐらいの感じ。出来たらこれよりもうちょっと太いのがいい。背丈が30cm止まりで太めのやつがベストだ。

まぁ、なかなかややこしいやつだが、さらにややこしいのは、旬がほんの1〜2週間だということ。最初の「ちょうどいいの」が見つかって、2週間後には「ちょうどいいの」がもうない。育ち過ぎている。(あとはつぼみのときね・・・・)

また、先に「その若芽を根元から切り取って、切り口のあたりを1〜2口だけ食べる」と書いた。「1〜2口」。何とも少量だ。うちの庭は狭いので、採ったのも5〜6本。家族4人でひとり2口だ。何しろ淡いおいしさなので、いくらでも食べられそうなのにも関わらず、ひとり2口・・・・。

さもしい私は、この1〜2口、何とか増えないものかと思った。それで、谷中生姜のイメージで、土を10cmほど掘って1本だけ少し根の部分も切り取ってかじってみた。が、硬くて食えなかったです。味もおいしくない。つまり、土に埋まっているほんの5mm〜1cmぐらいから地上部1〜2cmぐらいのところを食すだけなのだ。だからやっぱり1〜2口ということになる。まぁ、根の部分もおいしいと、夏につぼみが出てこなくなってしいそうだから、これでいいんです。大人になろう。

この季節、山菜や果物など個性の強い食材が出回る中、いとおしくも感じる淡いおいしさをほんのひと口ふた口。その淡ーい春の苦み・辛みとともにほんのり感じるミョウガの香りは、次の季節が近づいていることをそっと教えてくれているようだった。

2010年5月13日木曜日

生ホタルイカのワタ


今が旬のホタルイカ。この時期は、写真のような「生」にも出会える。ボイルしたのとは違った、生のトロッと感とややしっかりした歯ごたえが同居した食感に、ほんのり甘い新鮮な味わい。おいしい。夕べ、頂きました。

さて、この「生ホタルイカ」のパッケージには、以下のように書いてあった。

「加熱するか、生食の際は内臓を除去してお召し上がりください」

元来ワタ好きの私は、もったいない気持ちに後ろ髪を引かれたが、「万が一」はヤバイよなと思い、内臓を除去した。ボイルしたヤツや、しっかり干した素干し(大好物)はもちろん、沖漬けなんかも内臓入りだったと思う。そのワタの記憶が「もったいない」気持ちを引きずらせた。でもワタの生食は塩辛ぐらいなものか。でもせっかくの生食用のホタルイカ。

「そのワタ、一度生で食べてみた〜い」

ワタ抜きの刺身を食べた後、少しネットで調べてみた。

まず、警告的なのはこちらのサイト。
http://www.pref.toyama.jp/branches/1279/kansen/syokuchuudoku/IH200209.htm

旋尾線虫(せんびせんちゅう)という寄生虫がいると、旋尾線虫感染症というのにかかるらしい。ホタルイカへの寄生率は約3%(他のサイトでは寄生率7%というのもあった)。

次に、こちらの生ホタルイカの販売サイトは促し系だ
http://store.shopping.yahoo.co.jp/syun-sakana/y-hotaru001k.html

「特別企画! 新物ホタルイカ 1,000円ポッキリ 今だけ送料無料 【朝とれ直送】」といった売り文句が派手に並ぶ。また、「軽く水洗いして、そのまま醤油(しょうが醤油)などをつけてお刺身でいただくのが地元鳥取の食べ方です」ともある。そして、下記のような但し書きもあった。

「※到着日当日でしたら[生]のままお刺身でお召し上がりいただけますが、[生]でのお召し上がりがご不安な方は、火を通していただくか、一度冷凍保存してからお召し上がりいただくことをオススメいたします」

amazonには、「ワタまで生食可能!富山産の生ホタルイカのプロトン凍結冷凍」なんてのもあった。在庫切れだったけど。

一番気になったのは、wikipediaの「ホタルイカ」。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%82%AB

ここには、「安全に食べるには十分な加熱またはマイナス30℃以下で四日間以上の冷凍が必要である」とある。マイナス30℃イカ(以下)で四日間冷凍したものを解凍すればいいのか。一般家庭用の冷凍庫は何度まで冷えるんだろう。これが上記のamazonの「プロトン凍結冷凍」の意味するところなのだろうか。

まっ、夕べは生ワタ、食べなくてよかったな。と同時に、富山の人たちは生ホタルイカのワタを生のまんま食べているんだろうか、非常に興味がわいた。上記の警告的なサイトでは、新鮮さに関係なく寄生虫がいるときはいる、ということ。だけど、wikipediaのように「マイナス30℃以下で四日間以上」ものを解凍すればいいのか。このへんのことはきっと富山では「標準」があるように想像した。

昔は「フグにあたって死ぬ」話をときどき聞いた。しかしその卵巣は「命をかけるほどうまい」とも聞いたことがある。ホタルイカの生ワタは命がけではなさそうだけど、だからって・・・・ねぇ〜。他のイカのワタは塩辛以外、なぜか生で食べようと思ったことはない。なんでホタルイカだけそそられるんだろう。