2009年6月3日水曜日

ベトナムの普通のご飯


きょうは、ベトナムのご飯の話。それもごくごく普通のご飯。ベトナムでも食事をすることを「ご飯を食べる(an com)」と言う。もちろん米が主食だ。

私は仕事でベトナムへ行くから、食事も仕事がらみが多く、ときには有難くもてなされもし、宴会料理など特別な料理を食べることが多い。それはそれで楽しみだが、普通の食事を普通に食べるときが一番リラックスしていて、「あ〜、おいしいなぁ〜」としみじみ思うのも事実だ。

私の仕事場である「カンホアの塩」専用塩田で食事をするとき、「仕事がらみ」以外のときは、現地天日塩生産者のところで普通のいわゆるマカナイ料理を頂く。それが上の写真。お昼ご飯だった。写真では分かりにくいので少し解説しよう。

主菜:「焼き魚 〜 鯵(のような魚)」
焼き魚と言っても網じゃなく、フライパンに油をひいて両面焼いている。味はついてないので、箸で身を取った後、その後ろにある白い椀に入っているヌクマム(魚醤)に唐辛子を入れたタレを、各自でつけて食べる。

副菜:「豚のモツとインゲンの油炒め」
あっさり塩コショウ味。

スープ:「ヘチマとフクロ茸のスープ」
これも塩味。生姜か何か他にハーブ類が入っていたかも。ベトナムでヘチマは立派な食材だ。

デザート:マンゴ
この時期ちょうど旬だった。

これで3人分。あとは見てのとおりの白いご飯。インディカ米でタイ米と同様やや香りがある(土佐高知では「香り米」と呼ばれるらしい)。左にはデザートのマンゴ、赤い字で“Phu Sen”のラベルのビンは炭酸水だ。炭酸水はビールと同様、かち割り氷の入ったジョッキに注いで飲む。そう、ビールも氷を入れて飲むのがベトナム流。最初は私も戸惑ったが、今はジョッキの氷が溶けて小さくなると「氷をください」と普通に言う。料理が大きなお盆にのってるのは、単に片付けやすいから。これは食事する者同士がとてもカジュアルな関係にあることも示す。

食べ方にルールはない。でも、その人ごとに食べ方は何となくあるものだ。例えばこの日の私の場合はこんな感じだったと思う。

炒め物を少々食べた後、自分の箸でほぐした魚の身の端をちょんちょんとヌクマムのタレにつけ、左手で持ったお茶碗のご飯の上にのせる。それをタレでやや染まった白いご飯と一緒に口に運ぶ。そしてたまにスープの具のヘチマやフクロ茸をご飯の上にのせて、ややスープが浸みたご飯と食す。こうして2杯のご飯を平らげた後、3杯目はいきなりスープを具ごとご飯の上にかける。雑炊状態のご飯をお茶漬けのようにサラサラ食べる。そのお茶碗が空になったところで、今度はスープだけを注ぎ満腹感の余韻に浸りながらゆっくりとスープを食す。その頃になると、すでにマカナイのお姉さんがマンゴをむいてくれてて、マンゴもたっぷり食べて、ごちそうさま。

よく「ベトナム料理はおいしい」と言われる。私もそう思う。かつてジャーナリストの本多勝一氏は、「ベトナム料理は世界一おいしい」と言った。日本の料理もおいしいが、ベトナムから日本に帰って来るとある違いを痛感する。それは決定的に日本で食べる料理は食材の鮮度において劣ることだ。そして日本は加工品や半加工品が多い。(この場合の加工品とは自家製の漬物や納豆などではなく、冷凍・レトルト食品などのこと) 日本よりベトナムの方が断然暑いし、冷蔵庫・冷凍庫も普及していない。しかし皮肉にも、より涼しく冷蔵庫・冷凍庫が普及している日本の方が食材の鮮度が劣るのだ。この大いなる矛盾をどう見よう。それはベトナムの市場に行くと分かる。このことはまた改めて。

・・・追記・・・
巷のベトナム料理に関しては、知人の写真家・福井隆也氏がベトナム料理研究家の伊藤忍さんと共著で本を出版している。「よくぞここまで取材したな」と思う。

「ベトナムめし楽食大図鑑」(情報センター出版局)

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